0.テロップ「その日は遅く起きた・・・。」

 

1.矢田のアパート

  目覚し時計が鳴りつづけている。

  矢田琢也、手を伸ばしてアラームを止める。

  服を着替える矢田。

  朝(?)の缶コーヒーを買いに外に出る。

 

2.玄関の外

  鍵を閉める矢田。

(ここまで顔は映らない)

 

3.アパートの駐輪場

  オートロックの扉から豚のマスクを被った男が出てくる。

 

4.アパート近くの道路

  通行人が唖然として矢田の顔を見ている。

  矢田、平然と歩いていく。

  通行人が通り過ぎると何やら目つきの鋭い背広の木場警部が矢田の後をついて行く。

 

5.自販機

  自販機で缶コーヒーを買う矢田。

  矢田の隣に木場警部が現れる。

  矢田、気配を感じて木場警部の方を振り向く。

木場警部「・・・」

矢田「?」

  木場警部、いきなり拳銃を突きつける。

木場「手を上げろ」

  矢田、困惑しつつ恐る恐る手を上げる。

矢田「な、何ですか」

木場「お前を逮捕する」

  二人の動きがしばらく止まっている。(矢田と木場の心の駆け引き。)

  矢田、やばいと直感して木場を押して急に走り去る。

  木場、走り去る矢田を追う。

 

7.住宅街1

  矢田、必死で木場から逃げる。

  木場、落ち着いた走りでそれを追う。

 

8.住宅街2

  矢田、キョロキョロしつつ道の端で曲がる。

  木場、少しキョロキョロして矢田の行ったほうに曲がる。

 

9.運動公園の道

  運動公園に入って逃げる矢田。木場、だいぶ矢田に追いついてきている。

 

10.運動公園の茂み

  矢田、かく乱のために茂みに入って隠れる。

矢田「はあ、はあ」

  木場、矢田がどこに行ったか探す。

木場、すぐに矢田を見つける。

  矢田、捕まえられそうになったところで何とか逃げる。

 

11.運動公園の道2

  運動公園を走る矢田。

  それを追う木場。

 

12.運動公園のフェンス

  矢田、フェンスを乗り越えて逃げようとする。

  木場、矢田の服をつかみフェンスから引きずり落とそうとする。

  矢田、実際引きずり落とされる

  矢田、木場に抵抗してフェンスをまたぐ。

  そのままダッシュで走り去る。

  木場、負けずにフェンスをまたぐ。

  そのまま矢田を追いかける。

 

13.どこかの路上

  矢田、走って逃げる。

  追う木場。

 

14.狭い路地

  矢田、狭い路地を見つけそこに隠れる。

  木場、とうとう矢田を見つけられなくなる。

木場「くそっ!」

  矢田の隠れている狭い路地の近くを通り過ぎる木場。矢田に気がつかない。

  矢田、ほっと一安心する。

 

15.どこかの路地2

  何かを探して鈴木京子が走っている。

  木場とすれ違う鈴木。

  鈴木、狭い路地で何かを見つける。

 

16.狭い路地2

  疲れ果ててうずくまっている矢田。

  豚のマスクを取り外そうとする。

鈴木「とっちゃ駄目!」

  矢田、右左と見て鈴木の姿を発見する。

  鈴木、矢田のところに近寄る。

  矢田、警察の追っ手の一人だと思い少し後ずさりする。

鈴木「それをとっちゃ駄目よ」

  「(off)それをとったらあなたは死ぬわ」

矢田「・・・」

  鈴木、さらに矢田のところに近づく。

  矢田、鈴木から離れる。

鈴木「怖がらないで。私はあなたの味方」

  矢田、止まる。

矢田「味方・・・?」

鈴木「そう。味方」

  矢田と鈴木が地べたに座っている。

矢田「何でマスクをとっちゃ駄目なんですか?」

鈴木「死ぬから」

矢田「何でこれ取っただけで死ぬんですか?」

鈴木「あなたが豚だから」

矢田「いや。そういうことじゃなくて」

鈴木「黙って!」

矢田「いや、黙ってじゃなくさ」

  鈴木、矢田の方を睨んでいる。

鈴木「それ以上聞かないで」

矢田「いや、これ取りたいんですけど・・・」

鈴木「死にたくないなら取っちゃ駄目」(語気を強めて)

  「(off)良い?私の言う通りにすればあなたは助かるんだから」

  矢田、顔をうつむける。

矢田「・・・」

鈴木「わかった?」

矢田「あの・・・」

鈴木「何?」

矢田「あなたとはどこかでお会いしたような・・・」

鈴木「さあ。私は覚えてないけど」

 鈴木、路地の外をキョロキョロしてから矢田の手を引っ張ってどこかに連れて行く。

 

17.鈴木のアパートへの道

  鈴木と矢田が周りを警戒しつつ歩いている。

 

18.鈴木のアパート

  アパートに入る矢田と鈴木。

 

19.アパート

  矢田、ちゃぶ台で何かを待っている。

  鈴木、干草を持ってきてちゃぶ台に置く。

  矢田、呆然として干草を見ている。

矢田「あの・・・」

鈴木「あなたの餌よ」

矢田「はい?」

鈴木「はい?じゃなくてあなたの餌よ」

矢田「いや、よく意味がわからないんですが」

鈴木「食べておいた方が良いわ」

矢田「これを、ですか?」

鈴木「あなた、豚なのよ」

矢田「違うと思うんですが・・・」

鈴木「あなたは違うと思っても周りの人間が豚だって言ったらあなたは豚よ」

矢田「僕は豚なんて言われたことないんですが・・・」

鈴木「それはあなたが気がつかないだけ」

矢田「だいたいこれはマスクでしょ?」

  矢田、マスクを取ろうとする。

  鈴木、矢田を強引に止める。

鈴木「お願いだから私に逆らわないで!」

矢田「もう!わけがわからん!何で僕が豚なんだよ!」

  矢田、顔をうつむける。

  鈴木、矢田の手を取りつつ、

鈴木「私を信じて」

  鈴木、手を離して台所に行く。

  矢田、しょぼんとしている。

  矢田、干草を食べる。

  夜、暗い部屋でアパートの外を見つめている鈴木。

  矢田、ちゃぶ台の横で寝ている。

  鈴木、矢田に毛布をかけてやる。

 

20.アパートの外

  朝の風景。

  道の向こうから木場が歩いてくる。

 

21.アパート

  居眠りしていた鈴木。はっとなって起きる。

  まだ、矢田は寝ている。

  鈴木、窓の外を見つめる。

  鈴木、何かに気がつき慌てて矢田を起こす。

  矢田、何とか起きる。

矢田「何ですか?」

鈴木「あいつが来た」

矢田「あいつ?」

鈴木「逃げましょう」

  鈴木、窓を開ける。

矢田「おお、さぶ」

 

22.アパートのドア

  木場、ドアをピッキングしている。

  難なく開けて部屋に入る。

 

23.アパートの中

  部屋に入る木場。

  部屋はすでに誰もいない。窓が開け放たれている。

  木場、窓のところに寄って。

木場「くそ」

  窓の外で二人が逃げている。

 

24.アパート付近の路地

  鈴木と矢田が走って逃げている。

  木場、アパートから出てすぐさま二人を追う。

  木場、二人がどこに行ったかさまよう。

 

25.大きな川

  鈴木と矢田、川のところまで来る。

鈴木「あそこに!」

  鈴木、大きな橋に指を指し、そこの下に行くよう促す。

  二人、川の岸のほうへ降りていき、そのまま橋の下に隠れる。

  木場、やっと川のところに行って二人を探がす。

 

26.橋の下

  矢田と鈴木がゼイゼイ言っている。

矢田「いったいあいつは何なんだ」

鈴木「あいつは県警の刑事よ」

矢田「なんで僕が刑事に追われるんだ?」

鈴木「あなたが豚だからよ」

矢田「くそっ。何でそんな理由で警察に追われなくちゃあならんのだ!」

鈴木「しっ!」

  鈴木、矢田を黙らせる。

  沈黙の二人。

  鈴木、何気に矢田に拳銃を渡す。

矢田「あの・・・」

鈴木「あなたが使って」

  そこに木場が降りてくる。

木場「はあ、はあ」

  鈴木、矢田をかばうように手を伸ばしている。

  木場、拳銃を構えながら近づく。

木場「やっと見つけたぞ」

  鈴木、木場を睨んだまま矢田に話し掛ける。

鈴木「私の合図で向こうに逃げて」

  木場、ゆっくりと鈴木に近づく。

  木場がある程度近づいたところで鈴木が合図を言う。

鈴木「走って!」

  鈴木、台詞と共にすかさず木場に近づく。

  木場の手を抑える鈴木。

  木場、抵抗する。

  木場、拳銃を鈴木の腹に突きつける。

 

27.河川敷

  矢田、必死に逃げる。

  銃声が鳴り響く。

  矢田、走るのをやめる。

  矢田、橋の下のほうをじっと見ている。

  矢田、橋の方にゆっくり近づく。

  木場、矢田に近づいてくる。

木場「女は死んだ」

矢田「そんな」

  木場、拳銃を構える。

木場「死ね」

  矢田の頭を銃弾がかする。

  矢田、すかさず拳銃を構える。手が震えている。

  木場、ニヤッとする。

木場「撃てるか?」

  木場、矢田に近づいてくる。

木場「さあ、撃ってみろ」

  矢田、撃てない。

  木場、矢田の銃口に腹をくっつける。

木場「撃てるか?撃てんだろうな?」

  矢田、撃つ。

木場「え?」

  木場、自分の腹を見て唖然とする。

矢田「うわ。」

  矢田、銃を捨てて逃げる。

  木場、意識が遠のく中矢田の背中めがけて撃つ。

  矢田の足に当たって倒れる。

  矢田の血まみれの足。

矢田「痛え!くそ!痛えよ!」

  そこに死んだはずの木場が近づく。

木場「この人殺しが!」

 

28.処刑室

  正方形の狭い部屋。そこに椅子がある。

  そこに頭に変な装置をつけた矢田がいる。

  矢田は手と足を拘束されている。

  ぐったりとしている矢田。

  矢田の目の前にアニマルマスクをつけた男と白衣を着た女がいる。

  女の顔は鈴木である。

女「死んだみたいです」

マスク「そうか」

女「どんな夢を見させたんですか?」

マスク「悪夢を見せてやった」

女「人生の最後に悪夢とはかわいそうに・・・」