◯ 道路

作業服姿の森隆志巡査部長(28)が自転車をこいでいる。

バッグを肩にかけ、かごにコンビニ袋が入っている。

 

◯ 内海幸三宅・前

県庁職員の内海幸三宅の近くに自動車が停められている。

自転車の森、その前で止まる。

窓を2回叩く。

窓がゆっくり開く。

顔を出す中村昭彦巡査部長(30)。耳にはイヤホンがついている。

森、コンビニ袋を渡す。

森「差し入れです」

中村「ありがとう」

森「(内海宅を示し)・・・そろそろやりますか?」

中村「(うなずく)」

森、自動車から離れる。

中村「あ」

森、止まる。

森「?」

中村「何かあったら、連絡」

中村、耳のイヤホンを示す。

森「はい」

森、白手袋をはめて、内海宅に向かう。

×   ×   ×

自転車を家の前に止める。

玄関の前に立つ。

森、インターホンを押す。

森、返事がないのを見て、バッグから何か道具を取り出す。

森、道具で鍵をこじ開ける。

 

◯ 同・居間

森、居間に入り電話機を探す。

森、電話機を見つけてバッグから道具箱を出し、電話機を壊し始める。

森、電話機に盗聴器を仕掛ける。

 

◯ 同・前

自動車の中でコンビニ弁当を食べている中村。

内海幸三(26)、自動車の前を通る。

中村、慌てる。

中村、ジャケットの内ポケットに隠されたマイクで森に連絡。

中村「ちょっと良い?」

 

◯ 同・中

森、引出しを開けて何か調べている。

イヤホンから何か聞こえてくる。

中村「内海が戻ってきた」

森、袖に隠してあるマイクで答える。

森「・・・了解です」

 

◯ 同・前

自動車の中村。

中村「・・・」

 

◯ 同・中

森、手を止めないで仕事を続けている。

森「・・・」

部屋が書類で散らかっている。

 

◯ 同・前

内海、玄関の前に立って鍵を探している。

それを監視している中村。

中村「玄関に来た」

 

◯ 同・中

森、慌てて書類を片付け始める。

森「・・・」

 

◯ 同・前

内海が鍵を開ける。

自動車の中の中村。

中村「玄関を開けたぞ!」

 

◯ 同・中

森、書類を適当に掴みいっきに引き出しに入れる。

一枚、落ちる。

  

内海、玄関で靴を脱ぎ、すぐさま居間に向かう。

×   ×   ×  

森、慌てて窓から出ようとすると紙が一枚落ちているのに気がつく。

森「・・・」

×   ×   ×

内海、居間のドアを開ける。

×   ×   ×  

森、一枚をさっと取り、窓から出ないで台所に駆け込む。

×   ×   ×

内海、居間に入って何かを探している。

×   ×   ×  

森、台所の机の下に隠れている。

森「・・・」

 

◯ 同・前

自動車の中村、なかなか出てこない森を気にして焦っている。

中村「・・・」

 

◯ 同・中

内海、探しているものが見つからないらしい。

内海「?」

×   ×   ×

森、台所の勝手口を見てそこから出るか出まいか迷っている。

×   ×   ×  

内海、引出しを開ける。

いつもと中身が違う引出し。

入ってないはずの書類がたくさん入っている。

内海「?」

×   ×   ×

森、ばれないように勝手口から出ようと試みる。

内海「あ!」

森、内海の声にびっくりし机に隠れる。

×   ×   ×  

内海、台所に向かう。

森「・・・」

内海、もうはっきりと森が見えるところまで来ている。

内海「?」

内海、机に誰かがいるのを見つける。

森「・・・」

内海「(びっくりして)へ?」

森「・・・」

内海、下を覗こうとする。

森、体勢を整えなおし、かにバサミをして内海の足をはさんで内海を横に倒す。

内海、頭の横を強打する。

森、作業服のジャンパーで顔を隠し、勝手口から出て行く。

内海、意識が朦朧としている。

立ち上がると、“犯人”の後姿しか見えない。

内海「ど、泥棒・・・」

内海、頭を触ってみる。

手に血がつく。

 

◯ 同・前

自動車の中村。

中村「・・・」

裏口から、ジャンパーで顔を隠した怪しげな森が出て来る。

中村「?」

森、ジャンパーから顔を出す。

森「すみません」

中村「お、おお」

中村、鍵を開ける。

森「あ」

裏口からよろよろになって内海が出て来る。手にはバットが握られている。

森、慌ててジャンパーで顔を隠す。

森「中村さん。逃げて!」

中村「お、おお」

中村、自動車を走らせる。

内海、よろよろと森に向かってくる。

内海「ど、泥棒・・・」

森、止めてある自転車にまたがる。

内海、いきなり走り出す。

森、自転車をこぐ。

内海「まてっ!」

森、逃げる。

内海、ガレージに止めてある自転車に乗る。

 

◯ 道路

森、ジャンパーで顔を覆った変な格好で必死に逃げる。

頭から血を流し、バット片手に猛烈な勢いでそれを追う内海。

暗転。

 

◯ 黒地にメインタイトル『調査係の男』

 

◯ 道路

道路の角できれいに曲がる森。

内海、意識が朦朧としてきて、角を曲がれず自転車から転げ落ちる。

森、それを見ていっきに駆け抜ける。

 

◯ 雑居ビル・廊下

中山幸子警部補(32)が少し怒り気味に廊下を歩いている。

「有限会社〇〇」という標識が貼ってある部屋に入る。

 

◯ 同・一室

待っている森と中村。

遠山、机に手を叩きつける。

中山「どういうこと?」

二人「・・・」

中山「・・・」

二人「・・・」

中山「内海が被害届を出したって」

中村「・・・」

中山「森くん?」

森「・・・」

中山「内海に怪我させたって?」

森「(憮然とした態度で)ええ・・・」

中山「自分の犯したミス、自覚してるの?」

森「・・・」

中山「ねえ?」

中村「でも、一応、仕掛けるのは成功しました」

中山「そうだけど・・・」

中村「・・・このまま続けますか?どうします?」

中山「それは・・・、私には決められない」

中村「(ため息)」

森「仕掛けたんですよ。ほっとくんですか?」

中山「・・・とりあえず上の回答が出るまでは続けないと」

森「何で、自分で決められないんですか!?」

中山「(反論できない)・・・」

森、出て行こうとする。

すると中山が追いかける。

中山「ちょっと」

森「今からタマ(作業玉=協力者)に会う時間なんですが?」

中山「ああ、そう・・・」

森「失礼します」

中山「始末書!」

森「・・・」

森、出て行く。

中山「全く・・・」

遠山、中村のところに戻ってくる。

中山「・・・」

中村「中山さんが考えた仕事じゃないんですね?」

中山「(答えず)ちょっと、本部に行ってくる」

中山、出て行く。

中村「大変だな・・・」

 

◯ 同・ロッカールーム(夜)

森、ロッカーを開けて背広に着替えようとしている(ロッカーには警察の制服の他にさまざまな変装グッズが入っている)。

森、作業服のポケットから書類を見つける。

森「・・・」

 

◯ 飲み屋・個室(夜)

ブラックのスーツにノーネクタイ、白いワイシャツの岩田真一(40)が日本酒を一杯飲んで、森を待っている。

岩田「・・・」

 

◯ 道路(夜)

作業服の森が必死で自転車をこいでいる。

 

◯ 内海宅・居間(夜)

頭に包帯を巻いた内海の前に、大友一夫巡査部長(30)が座っている。

内海の妻、内海恵子(24)がお茶を持ってくる。

恵子「お疲れ様です」

大友「ああ、すみません」

大友、お茶を飲む。

内海「何で調べてくれないんですか?」

大友「あの・・・。書類一枚では・・・」

内海「この頭見てくださいよ!怪我までさせられたんですよ!」

大友「犯人グループの自動車のナンバーでも覚えとけば良かったんですけど・・・」

内海「私が悪いってことですか?」

大友「いえ・・・。まあ・・・」

内海「書類だろうが何だろうが盗まれたのにかわりはないんじゃないですか!?」

大友「お言葉ですが、内海さんがなくした可能性もあるじゃないですか」

内海「絶対にそれは無いです。あの紙は持ち運ばない」

大友「そうですか・・・」

大友、時計を見る。

大友「すみません、今日はそろそろ」

内海「いや、まだ話の途中ですよ」

大友、席を離れる。

内海「ちょっと、この頭の怪我はどうしてくれんですか?何で捜査しないんですか?」

大友「・・・うちの管轄外ですから」

内海「は?」

恵子「お疲れ様です」

内海「何がお疲れだよ!」

恵子「ご、ごめんなさい・・・」

 

◯ 同・外(夜)

自動車が停まっている。

そこに大友が近づく。

大友、窓を2回叩く。

窓が開くと中村が顔を出す。

中村「ご苦労様です」

大友「何がご苦労だよ」

中村、ビール券の束を渡す。

中村「・・・」

大友「じゃあ、今日はこれで」

中村、窓を閉めようとすると何かに気がつく。

中村「?」

大友「?」

内海宅前に作業服の森が現れる。

中村「あいつ・・・」

森、周りを探っている。

中村「ちょっとここで待ってて下さい」

大友「おい!」

中村、森の所に行く。

×   ×   ×

森、盗んだ書類をポストに戻そうとしている。

中村「どうした?」

森「あ、中村さん」

中村「それ、何?」

森「間違えてもって帰った書類です」

中村「戻しにきたの?」

森「はい」

そこに大友が来る。

中村「車のとこで待っててくださいよ」

大友「その書類・・・」

森「あ、持って来ちゃったやつです」

大友「それ、内海さんが探してたやつだわ、多分」

森「はあ、じゃあ、返しといてください。じゃあ」

森、急いで自転車に乗る。

大友「あ・・・」

中村、大友をチラッと見る。

大友「・・・」

中村、手を合わせてお願いをする。

大友「・・・またかよ」

大友、内海の家に向かう。

 

◯ 飲み屋(夜)

岩田、森を待っている。かなり酒を飲んでいる。机に拳銃が置いてある。

岩田「・・・」

 

◯ ターミナル駅(夜)

作業服姿の森が急いでトイレに駆け込む。

しばらくするとスーツ姿の森が出て来る。

 

◯ 飲み屋(夜)

岩田が待つお座敷に走ってくる森。お座敷の前に立ちネクタイを締めなおす。

お座敷のふすまを叩く。

森「失礼します!」

岩田「おお!」

森、気をつけして入る。

岩田、いきなり森の肩に手をかける。

森「あ・・・。し、失礼しました!遅くなってしまいました・・・」

岩田「本当、遅いですよ。何時間待ったと思ってるんですか」

森「も、申し訳ありませんでした」

岩田「まあ、そこに座ってください」

森「あ、はい!」

森、恐縮しきって対面に座る。岩田も座る。

森、いきなり土下座。

森「本当に本当に申し訳ありませんでした!今後はこういうことがないよう気をつけます故、どうか・・・」

岩田「良いですって。ほら顔上げてください」

森「あ、はい」

森、顔を上げる。

岩田、おちょこを持つ。

森「あ、おつぎします」

森、お酒をつぐ。

岩田「あなたもどうぞ」

森「あ、はい。いただきます」

森、酒を飲む。

岩田「さっそくあなたに話をつけとかないけないことがあるんですよ」

森「は、はあ」

岩田、男の写真を出す。

森「こ、この方は?」

岩田「うちのもんなんですが。パクられたんですよ」

森「え?」

岩田「まさか森さんが情報を流したんじゃないでしょうね?」

森「ま、まさか・・・」

岩田「何とか見逃してもらえないですかね?」

森「・・・」

岩田「森さんが何もできないことくらい知ってます。上のほうでなんとかしともらいましょうか」

森「・・・はい、それなら・・・」

岩田「いやね。多分、大丈夫だと思うんですよ。でも、念押しに森さんがちょいっとね」

森「ちょいっと・・・。はあ」

森、酒を飲む。

岩田「森さんがどれだけ信頼できるかちょっと疑問になってきましたよ」

森「そそそ、そんな!何言ってるんですか!」

岩田「いや、こっちも命張ってんですよ。一応、森さんと私の関係がばれたら組織追放ですからね。下手したら殺されるかもしれない・・・」

森「・・・」

岩田「森さんは本当に仲間なんですかね・・・」

森「・・・」

岩田「森さん、さっきから気がつきませんか」

岩田、机に置いてあるけん銃に目線をうつす。

森、しばらく考えてやっと机の上に置いてある拳銃に気がつく。

森「あ・・・」

森、拳銃をじっと見つめる。

岩田、その森をじっと睨む。

森、岩田の目を見る。

岩田、森の目を睨む。

森、拳銃に凝視。

森「・・・」

岩田「・・・」

森、拳銃を手に取る。

森、拳銃をじっと見ている。

岩田、森を睨んでいる。

森、いきなり拳銃を岩田に向ける。

岩田「おっと」

森「・・・」

二人のにらみ合いが続く。

森、急に表情が緩む。

森「(笑顔で)いけませんよ。これ本物じゃないですかあ!」

岩田、表情が崩れる。

岩田「(笑顔で)ええ。わかりましたか?本物なんですよ」

森、拳銃を机に置く。

森「お返しします」

森、滑らすようにして拳銃を岩田のところに送る。

岩田「ははは!そうですか。そうですか」

岩田、内ポケットに拳銃を入れる。

森「あ、そうそう」

森、カバンから封筒を出す。

そっと、差し出す。

岩田「何ですか?」

森「これはほんのばかりの・・・」

岩田「ああ、そう」

岩田、中身を確認。

岩田「こんなに良いんですか?」

森「いや、全然」

岩田「ところで、これ公費ですよね」

 

森「あ、3万まで公費です」

 

◯ 高架橋(夜)

スーツ姿の牧田千里(27)。欄干にもたれて行き交う車を見ている。

 

◯ 飲み屋(夜)

よっぱらった岩田としらふの森が下ネタで盛り上がっている。

 

◯ 高架橋(夜)

森、気持ち悪そうに歩いている。

千里、今にも飛び降りようとしている。

森、千里に気がつく。

森「おお、ちょっとちょっと」

森、千里の腕をつかむ。

千里「きゃっ!」

千里、森を振りほどく。

千里、その勢いで倒れる。

森「あ、すみません」

千里、森を睨む。

森「いや・・・、違うんですよ・・・」

千里「・・・」

森「様子が・・・、変だったんで・・・」

千里「・・・あれ?」

森「?」

千里「森さん?」

森「あ・・・牧田さん?」

千里、よく見ると涙を流している。

森「・・・」

×   ×   ×

森「今、何してるの?」

千里「無職・・・」

森「ああ、そっか・・・」

千里「森さんは?」

森「ああ・・・。サラリーマン」

千里「あれ?警察官になったんじゃなかったですか?」

森「ああ、辞めたから・・・」

千里「そうですか・・・」

森「その・・・。さっき・・・」

千里「すみません・・・。お恥ずかしいところを・・・」

森「いや・・・まあ」

森、時計をちらっと見る。

千里「あ・・・。すみません」

 

◯ 道路(夜)

歩いている森と千里。無言

森「・・・」

千里「・・・」

千里、森の腕を掴む。

森「?」

千里、森を見つめる。

千里「ありがとうございます」

森「あ、いや・・・」

千里「・・・」

森「明日・・・。仕事だから・・・」

千里「はい?」

森「あ・・・」

千里「森さーん!」

千里、森を軽く叩く。

千里「私、こっちなんで」

森「あ、うん」

千里「じゃあ・・・」

森「じゃあ・・・」

去って行く、千里。

森「・・・」

 

◯ 森の自宅(夜)

森、眠気眼でパソコンに報告書を書いている。

森、千里の涙目を思い出す。

森「・・・」

森、報告書を書き始める。

×   ×   ×

そのまま翌朝。

目覚まし時計が鳴りつづけている。

森、報告書を書きながら寝ている。

森、目を覚ます。

森「わっ!」

森、時計を止めてびっくりする。

森、慌てて出て行く。

 

◯ 内海宅・居間

朝食を食べている内海夫妻。

内海「部屋の戸締り気をつけてよ」

恵子「はい」

内海「今日、どっか出かける?」

恵子「さあ」

内海「そう」

恵子「あ、そうだ」

内海「ん?」

恵子「ちゃんと片付けはしてくださいね」

内海「は?」

恵子「これ」

恵子、ドライバーを出す。

内海「細かいな・・・」

恵子「私、こういう細かいもんが転がってるの我慢できないんです」

内海「ああ、ごめん。ごめん」

二人、しばらく沈黙。

内海「ん?」

恵子「?」

内海、ドライバーをじっと見ている。

恵子「どうしました?」

内海、ドライバーを手に取る。

内海「そんなドライバーあったっけ?」

 

◯ 電車

通勤電車に乗っている森。

あくびをしている。

 

◯ 内海宅・前

近くに停められている自動車。

中には中村が乗っている。

中村、あくびをする。

内海が玄関から出て来る。

中村、監視する。

恵子「いってらっしゃーい」

内海、手をあげて答える。

内海が自動車からだいぶ離れたところで中村が自動車を走らせる。

 

◯ 県警・前

県警に入っていく森。

 

◯ 同・廊下

真野俊介警部(40)がだるそうに歩いている。

そこに森が歩いてくる。

森「ああ、課長、課長」

真野「ん?あ、森くん」

森「おはようございます」

真野「おはよう。遅刻?」

森「あ・・・。すみません」

真野「全く・・・。あ、何か用?」

森「あ、ここでは何なんで」

真野「ん?ああ」

 

◯ 同・休憩室

森と真野が椅子に座っている。

森「あ、まずこれ報告書です」

真野「ああ、ありがとう」

森「あと、折り入って頼みなんですが、例の“恐喝”の件で・・・」

真野「ああ、あれね。大丈夫、話はついている」

森「ああ、そうなんですか」

真野「まあ、4課、かなり怒ってたけど」

森「何だ、話ついてるんですね・・・。良かった」

真野「あ、じゃあ。もう良いんだね?」

森「はい。すみません」

真野「おお」

森、去って行く。

 

◯ 県警・外

県警から出て来る森。

 

◯ 雑居ビル・前

雑居ビルに入っていく森。

 

◯ 雑居ビル

雑居ビルの狭い廊下を歩いている森。

そこの部屋の前に着く。

すると、携帯電話が鳴る。

森「?」

 

◯ 県警津島警察署・前

津島署に停められた自動車。

中村「内海がまた来たって」

 

◯ 雑居ビル

電話に答える森。

森「え?」

 

◯ 津島署・前

自動車の中村。

中村「何か、犯人の落し物があったって」

 

◯ 雑居ビル

森「え?落とし物?」

 

◯ 津島署・前

中村「ちょっと来てもらえるかな」

 

◯ 雑居ビル

森「あ、はい」

すると、部屋から中山が顔を出す。

中山「ここで電話しない!」

森「あ、今、中村さんから電話があって」

中山「何かあったの?」

森「落し物があったそうです」

中山「はい?」

森「その・・・、内海の家で・・・」

中山「何?落とし物って?」

森「あ、なんで、ちょっと行ってきます」

森、行こうとすると中山が腕を引っ張る。

中山「その前に、始末書」

森「あ・・・」

中山「忘れた?」

森「あ、絶対に今日中に出すんで」

中山「絶対ね」

森「はい。じゃあ、行ってきます」

走っていく森。

 

◯ 道路

必死で自転車をこいでいる森。

 

◯ 津島署・前

停まっている自動車。

中村と森が話している。

森「すみません・・・、何かミスばっかで」

中村「ああ。まあ、こっからでしょ、勝負は」

森「・・・どうしましょう」

中村「また、例の大友さんに頼んだ」

森「ああ」

中村「あ、来た」

大友、自動車の窓を2回叩く。

中村、窓を開ける。

中村「持って来てくれました?」

大友「やっぱり無理」

中村「そこを何とか」

大友「もうこれ以上はやばいって」

中村「頼みますよ」

中村、ビール券をちらつかせる。

大友「何で泥棒の片棒担がなきゃいけないの?」

中村「泥棒なんて人聞きの悪い」

大友「立派な泥棒ですよ」

中村「立派な情報収集活動です」

大友「大体なんで県庁職員なんて調べてるんですか?」

中村「それ、言えるわけないでしょ」

大友「・・・」

森「事件化はしないんですよね?」

大友「さあな」

森「でも課長に止められたでしょ」

大友「え?まあ・・・」

森「課長も出世したいなら本庁の言うことを無視できないと思いますよ」

大友「はい?」

森「我々は本部の指示で動いてるわけじゃないんで」

大友「・・・」

森「言ってることわかりますか?」

大友「・・・」

森「警部、目指してるそうですね?」

大友「え?」

森「我々のバックをなめない方が良いですよ」

大友「わ、わかったよ!ドライバー返して欲しいんだろ!じゃあ持ってくるよ!持ってくれば良いんだろ!」

森「すみません。お願いします」

大友、怒って去って行く。

中村「あんま、言わない方が良いと思うけど。そういうこと」

森「すみません。そうですね・・・」

中村「まあ、結果オーライで」

大友、戻ってくる。

中村「?」

大友、無言で手を出す。

中村「ああ、そうですね」

中村、ビール券を大友に渡す。

大友、去って行く。

 

◯ 県庁・外

自動車が止められている。

そこに中村と森が乗っている。

森「内海、落として意味あるんすかね?」

中村「さあ、やんごとなき方々の命令ですから」

森「上は何をしたいんだか・・・」

中村「まあ・・・な。部署の維持のためとかかな?」

森「何かお寒い話ですねえ・・・」

中村「それ言っちゃあかんわ。まあ、立派な仕事だからさ」

森「あ」

県庁から内海が出て来る。

中村「来たな」

自動車をゆっくり走らせる。

 

◯ 喫茶店○○

内海が喫茶店に入る。

その遠くに自動車が止められている。

森「いつもと導線が違いますね?」

中村「いつもまっすぐ家に帰るもんな」

森「誰かと会うのかな」

喫茶店の内海、コーヒーを頼む。

×   ×   ×

夜になる。

じっと喫茶店の内海を見ている二人。

内海の席に女(21)が現れる。

森「あ、女が来た」

中村「誰だ?わかる?」

森「んー。あの顔は見たことない・・・」

中村「写真撮って」

森「はい」

森、望遠レンズのついたカメラで写真を撮る。

内海と女、しばらく話した後で出て行く。

森「追いましょう」

 

◯ ラブホテル(夜)

ラブホテルに入っていく内海と女。

近くに止められた自動車。

中村「不倫?」

森「おそらく。現場抑えときましょう」

中村「おお」

森、シャッターをきる。

 

◯ 内海宅・前(夜)

内海、玄関に向かう。

玄関の前に立ち身なりを整えて入っていく。

自動車の中の森と中村。

森「アパートに行きましょう」

 

◯ 監視用のアパート(夜)

方耳にヘッドホンを当て盗聴器の集音を聞いている中村。

窓から内海の家を覗く森。

 

◯ 内海宅・台所(夜)

台所の机の上に書き置きと夕食がおいてある。

内海、書置きをごみ箱に捨て、夕食も流しに捨てる。

 

◯ 監視用のアパート(夜)

聞き耳を立てている中村。

森「あいつ、夕食捨ててますよ」

中村「夫婦仲どうなんだろ?」

森「って言うか、今日の写真で落とせそうですね」

中村「そうだな。楽勝じゃん」

森「はい」

森の携帯電話が鳴る。

森「あ、岩田・・・」

中村「どうした?」

森「メールです。タマからです。何か至急会いたいって」

中村「ああ、良いよ、行ってきな」

森「でも、昨日もやってもらって・・・」

中村「大丈夫、大丈夫」

森「じゃあ、この借りはいずれ・・・」

 

中村「おお」

 

◯ 飲み屋(夜)

岩田が落ち着かない様子で待っている。

森が慌ててやってくる。

森「あ、失礼します」

岩田「どうぞ」

森、すぐさま座る。

岩田「今日は早いですね」

森「ああ、いえ・・・」

岩田、どこか緊張して見える。

森「?」

岩田「あなたが信用できるから言おう」

岩田、写真を出す。

森、写真を手にとる。

森「?」

岩田「・・・」

森「誰です?」

岩田「自称ジャーナリストのカスだ。そいつを始末しないといけない」

森「え?」

岩田「・・・当然バレないように」

森「・・・」

岩田「私がやる」

森「・・・」

岩田「見逃してくれ」

森「見逃す?」

岩田「やれと言われたからやる。でも捕まるわけにはいかない」」

森「・・・」

岩田「命令に背いたら私が消されます」

森「・・・」

岩田「頼みます」

森「・・・少し時間を下さい」

岩田「時間がないんです」

森「え?」

岩田「日曜日に決行です」

森「すぐじゃないですか」

岩田「頼む」

森「・・・」

岩田、森の横に座る。

森、ちょっと怖くなる。

岩田「あなたを脅したくない」

森「・・・」

岩田「私は捕まってもいけないんです。やらないのもいけない。どちらにしろ最後まであなたがサポートしてくれないと私は消される」

森「・・・」

岩田「お願いします」

森「でも、私個人の判断では無理です。一度戻ってから上司と相談します」

岩田「じゃあ、その時に見逃すよう言っておいて下さい」

森「・・・」

岩田「私、自分が殺される目になったら、あなたを恨みます。自分が殺される前にあなたを殺すかもしれない・・・」

森「・・・」

岩田、対面に戻る。

岩田「さ、飲んで、飲んで」

森「は、はい・・・」

 

◯ 高架橋(夜)

千里、また欄干にもたれて行き交う車を見ている。

 

◯ 県庁・廊下(夜)

中山が内海の上司(40)に写真を渡している。

中山「内海さんですよね。これ?」

内海の上司「はい、間違いないです」

写真には、内海と女がラブホテルから仲睦まじそうに出てくるところが映っている。

 

◯ 県警・会議室(夜)

森と真野が暗い中で何か話している。

森「どうしましょう?」

真野「うーん。岩田からの情報は貴重だからなあ・・・」

森「でも、見て見てみぬふりをするのは・・・」

真野「そうだよ、そんなのはわかってるけど・・・」

森「どうしましょう・・・」

真野「まあ、しょうがないな」

森「切りますか?」

真野「見てみぬふりをしろ」

森「・・・」

真野、森の肩をたたいて部屋から出て行く。

 

◯ 公園(夜)

森、酒が抜けず気持ち悪そうにしている。

森、ベンチに座る。

森、携帯を開く。

千里からのメールが受信されている。

携帯の画面『今日、お時間有りますか(何か絵文字)』

森「・・・」

森、携帯を閉じてため息を吐く。

 

◯ 居酒屋(夜)

森と千里が向かい合っている。

千里「飲まないんですか?」

森「ちょっと・・・」

千里「来てもらえるとは思いませんでした」

森「うん・・・」

千里「・・・」

森「・・・」

千里「偶然。会うってこともあるんですね」

森「ああ・・・そうだね」

千里「森さんのスーツ姿、格好いいですね」

森「・・・」

千里「・・・」

森「・・・ごめん」

千里「何で謝るんですか?」

森「せっかく、誘ってもらったのにあんま気の利いたこと言えなくて・・・」

千里「森さんから気の利いたこと言われたことないです。昔から」

森「うん・・・。何て言うか・・・ちょっと抱えてる仕事が重すぎて・・・」

千里「どんなことなんですか?」

森「まあ・・・」

千里「森さん、今何の仕事してるんですか?」

森「うん・・・」

千里「話、聞きたいな・・・」

森「・・・いや、良いよ。つまらんからさ」

千里「・・・」

森「何か・・・ごめん」

千里「・・・」

 

◯ 道路(夜)

森、千里。並んで歩いている。

千里「・・・」

森「・・・」

千里「あの・・・」

森「・・・」

千里「(突然に)仕事、あるだけ良いじゃないですか!」

森「え?」

千里「私、ないんですよ!」

森「あ・・・ごめん」

千里「・・・」

森「・・・怒らせたか」

千里「(急に静まる)・・・すみません。こういうのが良くないんですけどね」

森「・・・」

千里「会社では面倒くさいやつで通ってたんで・・・」

森「・・・だいぶ、参ってるんだね」

千里「・・・すみません」

森「いや・・・俺も参ってるんだわ」

千里「・・・」

 

◯ 森の部屋(夜)

何故か、森の部屋にいる千里。

森、お茶を淹れて持ってくる。

森「どうぞ」

千里「はい」

森「・・・」

千里「・・・」

森、千里の手を優しく掴む。

千里「・・・」

 

◯ 喫茶店(翌日)

内海が上司(35)に呼び出されて何か話を受けている。

内海「あの・・・。改まって・・・」

上司「ちょっとね」

内海「・・・」

上司「いきなりで、あれだけど・・・。君、デモとかに参加してるんだってね?」

内海「・・・」

上司「そうなんだね?」

内海「・・・」

上司、デモの写真を出す。

上司「ここに写っているのは君だね」

内海「・・・」

上司「とりあえず聞くけど、君はこういう団体に所属しているの?」

内海「・・・」

上司「答えてよ」

内海「ちょっと待ってください!まさか、クビですか?」

上司「いや・・・。まさか、クビなんて・・・。あ、そうそう、あとこんな写真も」

内海「はあ」

上司、内海と女とホテルに入る現場をとらえた写真を見せる。

内海「あ!」

内海、慌てて取り上げる。

上司「デモはともかくこれは・・・」

内海「ああ、誰が・・・」

上司「誰がじゃないでしょ、こういうのはあんまり・・・」

内海「あいつか・・・・」

上司「大切な時期なんだからさ」

内海「・・・」

上司「クビにしようとは思わないけど、はっきり言ってこの前言っていた異動の話はなかったことに・・・」

内海「そ、そんな!」

上司「ごめん、ちょっと会う人がいるんで、私はこれで」

上司、去っていく。

内海「・・・」

 

◯ 県警・会議室

大友が部下の刑事(26)と一緒に3課長(35)に話をつけようとしている。

大友「やはり、考えたんですが、あの窃盗事件をうやむやにするのは問題ありかと」

3課長「まあ、そうですけどねえ・・・」

大友「特に内海さんが怪我をしているのがあとあとで問題になるかと」

3課長「・・・」

大友「いずれ問題になってマスコミにとりあげられたらどうするんですか?」

3課長「私に判断を仰がんで下さいよ!」

大友「じゃあ、私たちの判断で動きますよ!」

3課長「それは・・・」

大友「安心してください。処分は私が受けます。私の個人判断ということで処理してください。では」

3課長「ちょっと!」

部屋を出る大友と部下。

3課長「ああ・・・」

 

◯ 内海宅・居間

内海と惠子が口論している。

内海「お前が調べさせたんだろ!」

惠子「知りませんよ!っていうか不倫しておいて何ですか!その言い草」

内海「お前は俺を信用してなかったのか!」

惠子「信用も何も私は何も知らなかったんですよ!むしろ、あなたがそんなことする人だとは思わなかった」

惠子、泣き出す。

内海「くそっ!」

惠子「もう別れましょう!」

そこにインターホンが鳴る。

惠子「誰かしら」

惠子、玄関に出る。

×   ×   ×

惠子「はーい」

玄関には大友とその部下の刑事がいる。

大友「あ、突然失礼します。県警の大友です」

恵子「はあ・・・」

大友「ちょっとこの前のことでお話が・・・」

惠子「ああ、どうぞ・・・」

×   ×   ×

惠子、お茶を出す。

内海「で、お話とは?」

大友「はい。これは誠に言いにくいことなんですが、この前の事件を引き起こしたのは警官なんです」

惠子・内海「え?」

 

◯ 監視用のアパート

弁当を食べている中村が思わず箸を止める。

中村「おいおいおい・・・」

 

◯ 内海宅・居間

内海「どういうことですか?」

大友「調べたらわかりました」

内海「どういうことですか!?」」

大友「誠に申し訳ございません」

大友、土下座をする。部下もつられるように土下座。

内海「警察・・・。警察!っておまえもそのグルじゃねえか!」

大友「え?」

大友に掴みかかり首をしめる内海。

大友「内海さん・・・、ちょっと・・・」

内海「もう、むちゃくちゃだ!ふざけるな!」

惠子、いきなり玄関に駆け込む。

大友「内海さん、落ち着いて、落ち着いて聞いてください!」

内海「落ち着いて聞けるか!」

そこに惠子が戻ってくる。

惠子「あなた、落ち着いて!」

内海「うるさい!お前は黙ってろ!」

惠子、バットを握り締めている。

惠子「殺すなら、これで」

一同、動きが止まる。

 

◯ 監視用のアパート

中村が一切合切を片付けている。

中村「くそ・・・」

応援に森を呼ぶが電話が繋がらない。

 

◯ 街

手をつないで森と千里が歩いている。

×   ×   ×

千里、どこかの店で何かを見ている。

森も見ている。

 

どこかの店で服を見ている二人。

×   ×   ×

千里と森が何か一緒に食べている。

 

◯ 県警・会議室

警備課長の真野と3課の課長が話をしている。

真野「どういうことですか?私は知りませんよ」

3課長「何で知らないんですか?おたくの部下がやったことでしょ?」

机に森と中村の写真が置いてある。

真野「確かに私の部下だ。でも、そんな指示は出した覚えがない」

そこに突然ノックが鳴る。

二人「?」

中山「失礼します」

真野「その声は中山くん?」

中山「はい。入ってもよろしいでしょうか?」

真野「あ、入って」

中山、二人に近づきいきなり謝る。

中山「申し訳ありませんでした。あれはうちのミスです」

真野「は?」

中山「白状します。あの案件は本庁の指示による独自のオペレーションでした。だから、真野課長にも黙っていたんです」

真野「だってさ」

3課長「やっぱり・・・」

真野「やっぱりってあんた、何か知ってたのか?」

3課長「うすうす気づいてましたよ。本庁が本部を超えてごちゃごちゃ言うなんておかしいでしょ。一応、私も本庁の人間ですから」

真野「じゃあ、君の分室ってのはそのために作られたものだったのか?」

中山「複雑なオペレーションをこなすための特別な部署です」

真野「そうか・・・。そうか・・・」

中山「どうしましょう?課長」

真野「私の指示で大丈夫か?」

中山「まあ、最終的な判断は本庁が下しますが」

3課長「まずいんじゃないですか?だって怪我させたんでしょ?」

中山「そうなんですよ」

真野「結局さあ、ここで一番問題なのは内海宅へ侵入したのは警察の組織的犯行ですって、世間にばれちゃいけないってことでしょ?」

中山「まあ、そうなりますね」

真野「じゃあ、簡単だ。怪我を負わせた森の単独犯に見せれば良いんだよ」

3課長「あ、なるほど」

中山「まあ・・・」

真野「まあ、しょうがないよ。彼のミスなんだから」

中山「じゃあ、とりあえずあの二人を呼んで分室を片付けさせます」

真野「おお、すぐやってくれよ。分室はなかったことにしよう」

中山「じゃあ、すぐ行ってきます」

真野「おお」

中山、出て行く。

3課長「全く。とばっちりを受けるのは私なんですから・・・」

 

◯ 大学(夜)

大学に忍び込んだ森と千里。

 

◯ 同・広場のベンチ

ベンチに座っている森と千里。

千里「私の同級で三俣さんって覚えてます?」

森「ああ。ちょっと天然の三俣さん」

千里「あの子、結婚したらしいですよ」

森「ああ、そっか。まあ、そういう年だもんな」

千里「でも、私は結婚式に呼ばれず・・・」

森「ああ、そっか」

千里「はい」

森「結構、仲良かった気がしたけど・・・」

千里「そんなもんですよ」

森「そっか・・・」

千里「・・・今日は本当に休みなんですか?」

森「・・・うん」

千里「逃げたんじゃないんですか?」

森「・・・」

千里「すみません・・・」

森「いや・・・」

千里「私も仕事から逃げただけなんです・・・」

森「・・・」

千里「ダメ人間ですよ。私!」

森「・・・」

千里「森さん・・・」

森「?」

千里「大学にいるときから好きでしたよ」

森「え・・・マジか」

千里「・・・はい」

森「そんなことってあるのかな」

千里「・・・あるんです」

森「参ったな・・・」

千里、微笑む。

森「そっか・・・。逃げるか・・・」

千里「え?」

森「いや・・・。帰ろっか」

千里「・・・はい」

 

◯ 雑居ビル・廊下(夜)

分室の入っていた部屋からダンボール箱を運び出す。中山と中村。

 

◯ 雑居ビル・前(夜)

停めてある自動車にダンボールを入れている二人。

中村「これで終わりです」

中山「やっと終わり・・・」

中村「じゃあ、すぐ行きましょう」

中山「結局、森くん来ないし」

中村「まだ、つながりません」

 

◯ 自動車(夜)

走る自動車。中村が運転し、中山が助手席に乗っている。

後ろには大量のダンボールが積んである。

中山「森くん、逃げたかのかな」

中村「このことをいち早く気づいて」

中山「これで良いのかな・・・」

中村「まあ、大友の判断は正しいですよ。捜査しないって明らかに変ですもん」

中山「誰かが生贄にならないといけないわけか・・・」

中村「そうですね・・・」

中山「・・・これも仕事か」

中村「・・・」

中山「・・・」

中村「あいつ、逃げるとこまで訓練されてたりて・・・」

中山「まさか・・・」

中村「・・・中山さんは警備専科の講習受けたんですか」

中山「何、警備専科の講習って?」

中村「え?ああ・・・」

中山「・・・」

中村「今の聞かなかったことにできます?」

中山「(笑いながら)私も馬鹿じゃないから。ヤバいこととヤバくないことの区別はつくから」

中村「・・・俺も平和ボケしてんなあ」

中山「平和がなにより」

 

◯ 森の部屋(夜)

森のベッドで寝ている千里。

森、起きて辞表を書いている。

森、包丁を取り出す。

森、電話帳を持って行きて、包丁で刺している。

森、テープで電話帳を体に巻くように着けてみる。

森、自分の腹を包丁で刺してみるが、全く怪我をしていない。

森「・・・ガキみたいだな」

 

◯ 公園(夜)

待っている森。

そこに岩田が来る。

若者やカップルが周りにいる。

岩田「あ、どうも」

森、黙って顔を下げる。

岩田「あのこと、話つけてくれました?」

森「話つけました。警備の人に頼んであなたが狙っているターゲットを保護しています。今は警察署にいます」

岩田「ははは、森さん。ご冗談を」

森「それから明日、事務所に家宅捜索が入ります」

岩田「また、また」

森「もう決めたんです。やっぱり殺しを黙認できないってね」

岩田「強気ですなあ」

森「ですよ。っていうか当たり前のことですよ。だって、警官ですから」

岩田「今まで散々、私に媚び売ってきたじゃないですか」

森「ええ。そのことを今でも恥に思ってます。私が今考えているのは、このことを世間にばらそうかと・・・」

岩田「そんなことしたら森さんが”ばらされ”ますよ」

森「さあ、どうかな?私とあなたとの関係がばれたらあなたもまずいんじゃないですか?」

岩田「そうですか・・・」

森「じゃあ、私はこれで・・・」

岩田、黙っている。

森、去って行く。

岩田の表情が憎悪で燃えている。

岩田「森さん!」

森「?」

岩田「自分の身は自分で守って下さいよ」

森「・・・」

 

◯ 県警・会議室(翌朝)

課長と大友とその部下の刑事がいる。

3課長「ということで逮捕状は森巡査部長だけに出すようにして下さい。そしてこの事件は森巡査部長個人の犯行ということで処理するように」

大友「まあ、これでしこりはなくなりますが・・・」

3課長「しょうがないじゃないですか。良いじゃない、あなたの心配していた傷害罪および家宅不法侵入罪の件は解決するんだから」

大友「いえ。まあ、良いでしょう。じゃあ、裁判所に行ってきます」

 

◯ 千里の自宅

 

千里、二人分の弁当を作っている。

 

◯ 内海宅

作業服姿の森が自転車こいでいる。

内海宅の前で止まる。

森、玄関に向かう。

森、インターホンを押す。

森「すみませーん」

しばらくして内海が出て来る。

内海「はーい」

内海、眠そう。

森、名刺を出す。

森「あ、突然失礼します。私、探偵事務所に勤めている森と申しまして・・・」

内海、名刺を受け取り、

内海「は?」

森「ちょっと調べたいことが・・・」

内海「ちょっと待った!」

森「はい?」

内海「お前、まさか・・・」

森「え?」

内海「お前だな・・・」

森「何がですか?」

内海「お前だろ!」

森「どうなされました?」

内海「ちょっと待ってろ!」

内海、部屋に戻る。

森「・・・」

しばらくして内海が惠子を連れてくる。

惠子「ちょっとー。眠いじゃないですか」

内海「うるさい!お前が雇った探偵が来てるんだよ!」

惠子「だから探偵なんて頼んでませんって!」

内海「うるさい!この男に見覚えがあるんだろ!」

惠子「あのですねー。言っておきますけど、悪いのはあなたが不倫をしてたってことですよ!どんな理由であれ、それが事実ならあなたが悪いんですよ!」

内海「そ、それはそうだけどさ!俺が言いたいのはお前が俺に黙って勝手にこんな奴雇ったってことなんだよ!」

森「あー!お待ちください。私が今日ここに来たのは全く別の理由です。それに、私は奥さんに依頼を受けた覚えはないですよ」

内海「あー。そうなんだ」

惠子「だから言ったでしょ」

内海「あ!じゃあ、何ですか?こんな朝早くに?」

森「これです」

森、バックから何やら探知機のような物を出す。

いきなり変な音がする。

内海「?」

森「この家に盗聴器が仕掛けられている恐れがあります」

内海「え?」

 

◯ 同・中

森、探知機を持って電話に近づく。

電話に近づくといきなり音が変わる。実は森が操作している。

森「ちょっと良いですか?」

内海「はあ」

森、電話を分解する。すると盗聴器が出て来る。

森「出ましたね」

“探知機”が反応している。

内海「何でそんなもんが?」

森「さあ、でもいち早く警察に知らせた方が良いですよ」

内海「あ、はい」

 

◯ 同・前

内海夫妻が森にお礼を言っている。

内海「何か知りませんけど、親切にどうも」

森「いえいえ」

内海「私、思い当るふしがあるんですよ」

森「あ、そうなんですか」

内海「多分、警察です」

森「あ!まさか・・・」

内海「まあ、良いです。警察でも私らの見方がいるんで・・・」

森「へえ、あ!じゃあ」

森、去っていく。

森、止まる。

森「あ、この前はどうもすみませんでした」

内海「え?」

森、そそくさと自転車に乗る。

 

◯ 道路

森、自転車に乗っている。

 

◯ 県警・廊下

県警廊下を歩く森。

 

◯ 同・会議室

待っている森。

机の上には辞表が置いてある。

そこに真野が現れる。

真野「昨日はどうした?連絡が付かなかったけど・・・」

森「仕事辞めようと思いまして」

真野「(睨む)・・・」

真野、机の上の辞表を見る。

真野「・・・」

森「すみません。転職を考えてまして・・・」

真野「いきなりどうした?」

森「では失礼します」

森、出て行こうとする。

真野「どこに行くつもりだ?」

森「え?・・・分室です」

真野「分室か・・・」

森「あ、私達の活動はマスコミにばらしますんで」

真野「自分が捕まるのにか?」

森「捕まる?」

真野「お前の活動は違法だ」

森「・・・それ、調査係そのものの話じゃないですか」

真野「・・・」

森、ドアを開ける。

真野「待て!」

森「何です?」

真野「・・・自分の身は自分で守れよ」

森「(笑う)」

真野「何だ」

森「いや・・・、何でもないです」

真野「こっちではお前を守れないからな」

森「・・・知ってます」

森、出て行く。

真野「・・・」

 

◯ 県警前

県警から出てくる森。それを見ている岩田。

 

◯ 雑居ビル

雑居ビルの分室が入っていた部屋の前に着き、鍵を開けて入る。

 

◯ 同・中

何もないオフィス。

森「?」

そこに大友とその部下が入ってくる。

大友「森さん」

森「あ!」

大友「逮捕状です」

森「どういうことですか?」

大友「いろいろあってね」

森「みんな逃げたんですね?」

大友「さあ。私は自分の管轄内のことしかわかりません」

森「参ったな・・・」

森、両手を差し出す。

大友、手錠を出して近づく。

大友「あなたが仕事でミスをしたのが運の尽き・・・」

森、大友の腕を蹴り飛ばし、窓から飛び降りる。

大友「!」

 

◯ 同・前

窓から飛び降り必死で逃げる森。

階段から外に出て追いかける大友と部下。

 

◯ 道路

必死で逃げる森。

それを追う大友と部下。

 

◯ 千里の自宅

姿見で自分の服装と髪型のチェックをする千里。

 

◯ 道路

結局逃げのびた森。

森、公衆便所に入って行く。

×   ×   ×

森、出てくると服装が変わっている。

 

◯ 駅前

千里がベンチに座って待っている。

千里、腕時計を見る。

千里「・・・」

 

◯ 道路

歩いている森。

森、すれ違い様に刺される。

森、倒れる。

森「・・・」

ナイフを持った岩田、森を見下ろす。

森「つ、尾けてましたか・・・」

岩田「・・・」

森「・・・くそ」

森、顔をつっぷして苦しそうする。

岩田「甘いわ・・・ぼけ」

森「・・・」

岩田「バレバレだわ」

森「!?」

岩田、拳銃を取り出す。

森「!」

 

◯ 駅前

千里、暇つぶしに本を読み始めている。

千里、腕時計を見る。

千里「・・・」

 

◯ 道路

森の足に銃弾がとぶ。

森「うわあああっ!」

岩田「・・・」

森「ううううう・・・」

岩田「死ね」

岩田、また拳銃を構える。

森、仕込んでいたカッターナイフで岩田の首を刺す。

岩田「!」

岩田、拳銃は手放さない。

森、すかさず手を刺す。

岩田「うわあああああ!」

拳銃が地面に落ち、森、拳銃を怪我している足で蹴飛ばすがあまり飛ばない。

蹴った勢いで倒れる森。

岩田、体を投げ出し、拳銃を拾う。

森、足を引きずって必死に逃げようとする。

岩田、拳銃を片手で構える。

森「!」

 

◯ 駅前

千里、本を読んでいる。

風が吹いて、本のしおりが飛んで行く。

千里「あ・・・」

 

◯ 道路

茫然自失で見ている通行人。腰をぬかしている。

胸を打ち抜かれる森。

森、悲鳴を上げてのたうち回る

森「うわああああ」

岩田「甘えんだよ。カス」

森「ああああ・・・」

岩田「・・・」

森「つ、通報されますよ・・・、こここ、こんな・・・とこで」

岩田「どうせ、死ぬつもりのだったから関係ねえよ。バカ」

岩田、森を蹴っ飛ばす。

森「うぐっ!」

森、しばらくしてしゃべらなくなる。

岩田「くそ・・・」

岩田、それを見て、無言で立ち去るが、意識を失い、倒れる。

通行人、逃げ出す。

 

◯ 駅前

千里、しおりを拾ってベンチに座る。

千里「・・・」

千里、携帯を出して森にメールする。

 

◯道路

サイレンが鳴り響く道路。

森の携帯がメールを受信する。

森、体に電話帳を巻いているが血まみれになっている。

森、携帯でメールを打つ。

森「(メール打ちながら)銃パクっとけばよかった・・・」

 

◯駅前

千里、森からのメールを受信し、見る。

千里「(微笑む)・・・」

暗転。エンドロール流れ出す。

 

 

(終)