◯スタバのような喫茶店

窓際の席でMacBookで何か文章を書いている楠木(29)。

楠木、机に置いたiPhoneを手に取りNewsPicksっぽいサイトを見ている。

隣に制服を着た桜井瑠璃(14)が座る。

瑠璃、楠木のiPhoneを覗く。

瑠璃「意識高いですね」

楠木「?」

瑠璃「意識高いですね」

楠木「え?」

瑠璃「意識高めですね」

楠木「・・・」

瑠璃、カフェラテを飲む。

楠木、席を離れる。

瑠璃「まだ外に出ないほうが良いですよ」

楠木「?」

瑠璃「まだ外に出ない方がいいです」

楠木、無視して外に出る。

しばらくして瑠璃の前の歩道を歩く楠木。

そこに植木鉢が落下する。

楠木、植木鉢にぶつかり倒れる。

瑠璃「だから言ったのに。ねえ」

瑠璃、カバンから顔を出してるモルモットのぬいぐるみに話しかける。

 

◯タイトル「世界は存在しない、あるいは魔法少女の話」

 

◯都内、大学病院、ミーティングルーム

精神科医(50代、男性)と看護師(30代、女性)と患者(10代、女性で瑠璃と同じ顔、髪型が違う)と患者の母親(40代)がパイプ椅子に座って4人向かい合って座っている。

患者「先生は小腹空いたら何を食べますか?」

精神科医「そうだな。チョコレートかな、君は(看護師に向かって)?」

看護師「私は我慢してます!」

精神科医「我慢ね。まあ、そうだな。でも、強いていうと?」

看護師「そうですね。団子とか?」

精神科医「団子?みたらし団子みたいなもの?」

看護師「そうですね」

患者「私もチョコレートを食べたんですよ。で、一気に全部食べたりしませんよね。板チョコとか」

精神科医「そうだね。あ、でも僕は一気に食べるかもな」

看護師「私は一気に食べないです」

患者「そうなんです。食べかけのチョコレート。それが歩き出したんです」

母親「・・・やめて」

精神科医「チョコが歩く?板チョコに足が生えたの?」

患者「そうです!まさに足と手が」

精神科医「そうか僕はそういうのみたこと無いんだよね。詳しく教えて・・・」

母親「もう、やめて!」

患者「え?」

精神科医「○○さん。どうしました?」

母親「・・・」

看護師「(口パクとジェスチャーで)落ち着いて」

母親「すみません」

精神科医「ごめんね。チョコ人間の話詳しく教えて」

 

◯三鷹市内、大きな公園

瑠璃と三橋沙羅(14)が並んでいる立っている。

ジブリ美術館付近。

瑠璃「困ったねえ」

沙羅「・・・」

瑠璃「まさか予約しないと入れないとは!」

沙羅「・・・」

瑠璃「沙羅ちゃん。どっか行きたいとこある?」

沙羅「・・・」

瑠璃「沙羅ちゃん?」

沙羅「あの。桜井さん」

瑠璃「はい。え?なにかしこまって」

沙羅「私、ひとりで池袋に行きたい」

瑠璃「え?池袋?私も行く!」

沙羅「いや、だから私ひとりで・・・」

瑠璃「ダメダメ!それぼっちだよ!」

沙羅「いや・・・。まあ・・・」

瑠璃「修学旅行終わって、『私ぼっち旅行だったけど、何か質問ある?』とかスレ立てるんでしょ?」

沙羅「え?何?」

瑠璃「ネタだ。あ、わかったネタのために体はるんだ」

沙羅「いや。その・・・」

瑠璃「池袋ね」

瑠璃、東京案内の本を出す。

瑠璃「サンシャインかなあ」

沙羅「じゃあ。私、行くから」

瑠璃「あ、わかった。沙羅ちゃん。乙女ロードに行きたいんでしょ?」

沙羅「!」

瑠璃「私も行く!」

沙羅「ごめん。ひとりで行くね」

沙羅、足早に去って行く。

瑠璃「待ってよお」

瑠璃、追って行くと鞄からモルモットのぬいぐるみが落ちた様子。

瑠璃「あ」

沙羅、去って行く。

瑠璃、ぬいぐるみを拾う。

瑠璃「ごめん。大丈夫?」

瑠璃「うん。気をつけるよ」

瑠璃「え?あ!」

瑠璃、沙羅の行った先を見ている。

瑠璃「沙羅ちゃん、行っちゃったよ」

瑠璃、ずっと独り言を言っている。

そこにクラスメートの間宮健太郎が通る。

間宮、独り言を言う瑠璃を黙って見ている。

瑠璃「あ!」

瑠璃、カバンにぬいぐるみをしまう。

間宮「・・・」

瑠璃「?」

間宮、足早に立ち去る。

 

◯都内、大学病院、ミーティングルーム

精神科医「(看護師に)チョコレートが歩くってどういうことだろうね?」

看護師「私のイメージではアニメに出てくるキャラクターのイメージです」

精神科医「アニメね。確かにチョコレートのお化けみたいなものは僕もイメージできたな。ただ、実際にそういうのを見たことないからね」

看護師「そうですね。あなたが見た歩くチョコレートって目はあった?」

患者「目はないです。確かに私はアニメは好きです。小さい頃はアニメばかりみていて母親に怒られていました」

精神科医「〇〇さん、実際そうだったんですか?」

母親「ええ。共働きでこの子に留守番を任せていました」

患者「私、あの先生はわかりますかね?アニメのこと」

精神科医「ごめんね。詳しくはないんだけど、君(看護師に)は詳しい?」

看護師「私もあまり。でも先生よりは詳しいかな」

患者「その、私は小さい頃から魔法少女ものが好きだったんです」

精神科医「ほう。魔法少女」

看護師「ああ小さい子が見る」

患者「そうです!で、私の見たチョコレートはそういうアニメに出てくるような感じのものです。絵も書けますよ!」

精神科医「絵が書けるの?それは見てみたいな」

 

◯三鷹市内、大きな公園

間宮がスケッチブックに美少女キャラが戦う漫画のラフスケッチを書いている。

瑠璃(声)「へえ。絵が上手だね」

間宮「!」

間宮、慌ててスケッチブックを閉じようとするが瑠璃が取り上げる。

瑠璃、漫画のセリフを大声で読み上げる。

瑠璃「『私があなたを守るわ』」

間宮、スケッチブックを取り返そうとする。

瑠璃、奪われないように背中を向ける。

瑠璃「『ダメだ!逃げろ』」

間宮「おい!」

瑠璃「『ピカっ』。『うわ』『なんだこの光は』」

間宮、手を振り上げる。

瑠璃「待って。また殴るの?」

瑠璃、間宮の腕を掴んでいる。

間宮「!」

瑠璃「男子殴るならまだしも。女子も殴る?」

間宮、手を振り下ろす。

間宮、腕が痛そう。

瑠璃「間宮くん。こんな才能があるんだね」

間宮「(瑠璃の腕力に困惑)・・・」

瑠璃「これ、クラスのみんなにバラそうかな」

間宮「(我に返り)やめろって」

瑠璃「でも、いかにもな美少女キャラだね。萌えー!!」

間宮「返せ」

瑠璃、スケッチブックを上に持ち上げる。

瑠璃「私の言うことを聞いてくれたら秘密にする」

間宮「は?」

瑠璃「私の命令に従って」

間宮「意味わかんないし」

瑠璃「『そんな!私、私、なんてことを!』」

間宮「読むなって」

瑠璃「じゃあ、私の言うこと聞いて」

間宮「・・・」

瑠璃「え?」

間宮「わかった」

瑠璃「うん。じゃあ、私についてきて」

間宮「え?」

瑠璃、歩いて行く。間宮、瑠璃についていく。

 

◯池袋

黒ずくめの服装をした男(30代)が腕を組んでビルの壁にもたれかかっている。

行き交う通行人を見ている。

通行人に沙羅がいる。沙羅、うつむいて歩いている。

黒ずくめの男、沙羅を見ている。

歩く沙羅。

沙羅(声)「ぼっち。ぼっちの修学旅行。なんで私だけひとり?みんなどこ行ったのかな?でも私から一人になりたいって言ったし。まあ、他の人のことなんか気にしないでおこう。どうせ私のことキモいとか言ってるんだろうし。ああ余計なこと考えなきゃ良かった。もう!」

黒ずくめの男、片手を広げ、さらに向ける。

(沙羅の胸元から”何か”を取り出した)

沙羅、去っていく。

 

◯都内、大学病院、ミーティングルーム

一心不乱に絵を描いている患者。

スケッチブックには足と手の生えたチョコレート人間の絵。

精神科医「これがチョコレート人間か」

看護師「でも私のイメージしたもの、こんな感じです」

精神科医「確かに漫画のキャラクターみたいだ。これが見えているの?」

患者「・・・」

患者、チョコレート人間の横にモルモットのような動物を書き始める。

精神科医「これは?」

患者「あ。すみません」

看護師「絵、上手!」

精神科医「このネズミは何?」

患者「精霊です」

母親、頭をかかえる。

精神科医「精霊?スピリット?」

患者「はい。魔法の国の精霊です」

看護師「魔法の国?」

精神科医「魔法?」

患者「はい」

 

◯三鷹市内・川沿いの道

瑠璃と間宮、並んで歩いている。

間宮、落ち着かない。

瑠璃「間宮くんはなんでクサクサしてるのかな?」

間宮「は?」

瑠璃「あ、クラスの誰かに見られるの気にしてる?」

間宮「・・・」

瑠璃「沈黙も答えね。間宮くんってワルぶってるよね?」

間宮「は?」

瑠璃「でも私知ってる。お母さんとイオンに行ってたのね」

間宮「は?何?」

瑠璃「いや。羨ましいなと思ってね。だって私の家はそんな雰囲気ないから」

間宮「行ってないけど」

瑠璃「あ、別にお母さんと一緒に出かけるの悪いことじゃないよ!」

間宮「うざい」

瑠璃「私はお父さんに殴られてるし、お母さんもお父さんに殴られてるし。かと言ってお母さんは私に優しくないし。お母さんも叩くし」

間宮「・・・」

瑠璃「そ。だから人に手を挙げるのは良くないと思うよ。間宮くん」

瑠璃、スケッチブックを出し間宮に見せる。

間宮「!」

間宮、奪おうとするが瑠璃、かわす。

瑠璃「学級委員として、お願い。みんなと仲良くしようよ」

間宮「・・・」

瑠璃「これ、バラされたくないでしょ?」

間宮「は?」

瑠璃「お母さんとイオンに行ったことも」

間宮「・・・」

 

◯池袋・同人雑誌の売っている店

同人誌を物色している沙羅。

どこかキョロキョロしている。

沙羅、一冊手に取りパラパラめくる。

美少年同士が"仲良く"している漫画。

 

◯池袋・同外

店から出てくる沙羅。

そこに沙羅と同じ制服を着た女子数名がいる。

女子の一人「あれ、三橋さんだ」

女子の一人「あの店なに?」

女子の一人「すげえキョドッてるんだけど」

女子の一人「っていかなんで一人?」

女子の一人「ぼっちじゃね」

女子の一人「かわいそうだから声かけてあげようよ」

キョドッてる沙羅に女子の集団が近づく。

女子の一人「三橋さん?」

沙羅「あ!」

女子の一人「はぐれたの?」

沙羅「いや、あの、さあ」

女子の一人「漫画買ったんだ?」

沙羅「え?ああ、いや?」

女子の一人、沙羅の買った同人誌を手に取る。

沙羅「あ!!」

女子の一人「あら、ま」

女子の一人「え、なに?」

女子の一人「うわっ、キモ」

女子の一人「こら」

沙羅に同人誌を返す。

沙羅「・・・」

女子の一人「あ、ごめんね。三橋さん一人すきだもんね。うちら行くね」

沙羅「・・・」

去って行く女子の集団。

沙羅、拳を握りしめている。

黒ずくめの男がニヤついている。

 

◯池袋・執事カフェ

落ち着かない様子で一人座っている間宮。

そこに戻ってくる瑠璃。

瑠璃「決めた?」

間宮「え?ああ。コーラ」

瑠璃「え?コーラ?ここまで来てコーラ?」

間宮「コーラ」

瑠璃「ええ?どうしようかな?ここはパンケーキ?」

そこに店員が来る。一人は執事の格好。一人はカジュアルスーツ。

執事「あの?」

瑠璃「あ、ごめんなさい。まだ決めてないです」

カジュアルスーツ「あの、君たち未成年?」 

間宮「あ」

瑠璃「あ、大学生です。だから一応未成年かな」

カジュアルスーツ「え?ああ、でも」

瑠璃「これ?これはコスプレですよ。なんていうんですか?その、修学旅行に来た田舎の中学生がおどおどしながら東京に来ているっていうプレイです」

間宮「あ、いや」

瑠璃、カバンに手を入れ何か握っている。

カジュアルスーツ「そうか?どこの大学?」

瑠璃、すかさず学生証を見せる。

カジュアルスーツ「ああ、すみません」

瑠璃「間宮くんも」

間宮「え!?」

瑠璃、間宮のカバンを勝手に開け学生証をカジュアルスーツに渡す。

カジュアルスーツ「ああ、どうも」

瑠璃、学生証を受け取る。

カジュアルスーツ、執事に何か耳打ちし去って行く。

執事「ああ、えっと、ではごゆっくり・・・」

瑠璃「苦しゅうない」

執事、去って行く。

間宮、瑠璃の持っている学生証を奪う。

間宮「え!?」

瑠璃「何?結局コーラだけ?」

間宮「いや、これ作ったの?」

瑠璃「作った?まあ、作ったといえばそうなるのな?」

間宮「俺の写真どうやって・・・」

瑠璃「やっぱパンケーキでいいや、すみませーん!、あ、違う、この呼び鈴か」

瑠璃、呼び鈴を鳴らす。

 

◯都内、大学病院、休憩室

絵を書いている患者。

精神科医「止まらないね」

看護師「絵を描くのがすきなんだね」 

母親「そうですね。ずっと家で留守番してたから」

精神科医「(看護師に)君のところはどうしてるの?」

看護師「私のところは立川が地元なので、母に面倒見てもらってます」

母親「私の実家は青森なので・・・」

精神科医「ああ、青森」

母親「早く疎開していれば良かってんですけど」

精神科医「まあ、それはそれです」

母親「仕事が忙しくて」

看護師「東京の人ってこういう時も普通に働くんですね」

精神科医「え?まあ、東京に限らず世界中そんな感じだけど」

母親「でも、気が楽ですね」

精神科医「というと?」

Jアラートが館内に響き渡る。

看護師、スマホを見る。

精神科医「どこに落ちそう?」

看護師「東京ですね?」

精神科医「またか。懲りないね、さ、一旦窓のないところへ移動しましょう」

患者、絵を描き続けている。

母親が鉛筆を奪おうとすると看護師に止められる。

精神科医「さ、行くよ、ここ危ないから」

患者「あ、はい」

4人、部屋を出ると、ジェット機が通り過ぎたような轟音が鳴り響く。

看護師「伏せて!」

4人頭を抱えてうずくまる。

凄い轟音が通り過ぎて行く。

精神科医「(大声で)あれ、向こう行った?」

看護師「(大声で)多分!」

轟音が小さくなり、静寂に。

しばらくするもかすかな爆音とともに部屋が揺れる。

精神科医「どこに落ちたのかな?」

看護師、スマホを見る。

看護師「相模湾です」

精神科医「落ちたか。アメリカ頑張れよ」

看護師「ネット見る限りアメリカはもう機能してないみたいですよ」

母親が突然笑い出す。

母親「ああ、すみません。なんか、やっぱりプロだなと思って」

精神科医「いや、これは、まあ確かに。でも人間にとって一番大事なことって何だと思います?」

母親「え?」

精神科医「医療ミスや工事現場の事故、これの9割はヒューマンエラーなんです」

母親「人間が一番悪いと」

精神科医「いや、まあ。それより大事なのは、人間は落ち着けばミスはかなり減るということです」

看護師「そう。私、気が動転してるんですよ。こう見えて」

精神科医「え?そうなの?」

看護師「そうですよ!」

患者、絵を描き続けている。

制服を着た美少女が魔法の杖のようなものを持っている絵。

 

◯池袋・執事カフェ

パンケーキの写真を撮る瑠璃。

コーラをストローですする間宮。

そこに沙羅が入ってくる。

沙羅、挙動不審。

店員が近づく。

沙羅「あ、すみません」

瑠璃、沙羅を見つけ、手を振る。

瑠璃「沙羅ちゃん、遅いよ」

沙羅「あ」

沙羅、慌てて外に出る。

間宮「あれ」

瑠璃「追いかけよう」

間宮「え?」

 

◯池袋

沙羅、早足で歩く。

瑠璃と間宮、追いかける。

沙羅、人にぶつかり倒れる。

沙羅「すみません」

目の前には黒ずくめの男。

黒ずくめの男「大丈夫?」

沙羅「あ、はい」

黒ずくめの男、沙羅に手を差し出す。

沙羅、手を出す。

瑠璃「あ!」

黒ずくめの男「!」

瑠璃、いきなり片手をパーにして胸の前に構える。

黒ずくめの男の顔にカメラが高速ズームする。

黒ずくめの男、倒れる。

沙羅「!」

沙羅、黒ずくめの男に手を差し出す。

瑠璃「触っちゃダメ!」

沙羅と黒ずくめの男の手に触れる。

 

◯都内、大学病院、休憩室

精神科医と看護師がタバコを吸っている。

看護師「入院させた方が良いんでしょうか?」

精神科医「いや。あの、治療方針は患者と家族がいない場所で決めないから」

看護師「ああ、すみません」

精神科医「ただ、一般的な話をすると今、日本で空いている病室はないと思う」

看護師「そうですね」

精神科医「彼女に限定する話ではないので」

看護師「はい。わかってます」

精神科医「君は大丈夫?」

看護師「意外と冷静なものです」

精神科医「そうだね」

看護師「死ぬとわかってるからですかね」

精神科医「うん。どうだろう。でも、いざこう言う事態に出くわした時、人類は意外と冷静なものなんだな」

看護師「ええ。自分でも驚いています」

精神科医「・・・彼女のこと、一つだけ」

看護師「ええ」

精神科医「彼女は病んでいないと思う」

看護師「・・・」

精神科医「彼女は『現実』を見たんだと思う」

看護師「現実?」

精神科医「大勢の人、自分の父親が目の前で死ぬと言う現実。これは本当の現実なんだと思う」

看護師「?」

精神科医「私たちは現実なんて見ていないのかもしれないよ」

看護師「・・・」

精神科医「そう言う意味では私たちの方が狂ってるのかもね」

看護師「・・・すみません。意味がわかりません」

精神科医「ああ。ごめんごめん」

看護師「戻りましょう」

精神科医「うん」

 

◯新宿都庁前広場

池袋で沙羅にをいじった女子たちが倒れている。

最後の一人が更にナイフを持った沙羅と対峙している。

女子「・・・」

沙羅「ごめんね」

女子「・・・」

沙羅「これは現実だから」

沙羅、ナイフで女子に襲い掛かるが女子はカバンで抵抗する。

物陰でその様子を見ている間宮。

間宮「・・・」

そこに瑠璃の声。

瑠璃の声「意外と冷静だね」

間宮「ひ!」

瑠璃の声「でもないか」

間宮「け、警察は・・・」

瑠璃の声「ここでは現実の統治機構は無力だから」

間宮「は?」

瑠璃、間宮を追い越す。

瑠璃、制服ではあるがちょっと雰囲気の違う服装(魔法少女の格好)になっている。

間宮「!?」

瑠璃「私に任せて」

間宮「・・・」

瑠璃「あなたは私が守るから」

瑠璃、いつの間にか長い棒を持っている。

 

◯都内、大学病院、休憩室

患者のスケッチブック。魔法少女が魔法の杖を持って怪物と戦っているイラスト。

精神科医「漫画家になるの?」

患者「え?」

精神科医「ああ、ごめんね。お茶飲む?」

患者「ああ」

母親「ありがとうございます」

母親、代わりに受け取り患者に渡す。

患者「ありがとうございます」

母親「みなさん大丈夫なんですか?」

看護師「ええ」

母親「こんな時に・・・」

精神科医「?」

母親「精神科にかかっている場合じゃないですよね」

精神科医「そんなこと言わないでくださいよ!」

母親「ああ、違うんです。みなさん、もっと見るべき患者さんが・・・」

患者「?」

母親「・・・」

看護師「みんな人のために働いてはいないですよ」

精神科医「ん?と言うと?」

看護師「みんな超人ではないですから。やれることしか出来ないんですよ」

精神科医「確かに。私はけが人の治療をどこまでできるかわからないね」

看護師「私も」

精神科医・母「え?」

看護師「いや。長いことここに務めてますから」

精神科医「君は絵を描くことが一番楽しい?」

患者「・・・そうですね。でもちょっと違うかも」

看護師「漫画を描くってこと?」

患者「それもちょっと違う」

精神科医「想像すること」

患者「ああ・・・」

精神科医「想像力を使うこと」

患者「・・・かも、しれません」

母親「想像力・・・」

 

◯新宿都庁前広場

瑠璃が棒で沙羅と戦っているが、瑠璃の棒がナイフで折られてしまう。

瑠璃、半分になった棒で必死に抵抗する。

沙羅の背後に沙羅と同じ動きをする黒ずくめの男がいる。

瑠璃「やっぱり無理だわ」

瑠璃、急に逃げ出し、

間宮のところに行く。

間宮「え・・・」

瑠璃「私、実際、回復専門だから」

間宮「は?」

瑠璃「まだ仲間が集まってないから。やっぱダメだ」

間宮「・・・」

瑠璃「あなたの力が必要」

間宮「え・・・」

瑠璃「攻撃力を高めるには男子の力が必要なの?わかる?」

間宮「・・・」

瑠璃、折れた棒を胸の前に構える。

瑠璃「一緒に持って」

間宮「・・・」

沙羅が二人に近づく。

瑠璃「私と同じ言葉を言って」

間宮「・・・」

瑠璃「知ってるでしょ」

間宮「は?」

沙羅、走ってくる。

瑠璃「滅びの呪文!」

間宮「バ・・・」

瑠璃「まだ」

間宮、瑠璃の持つ棒を掴む。

沙羅、ナイフを構える。

瑠璃、間宮の手を握る。

瑠璃「せーの」

東京都(!)が光に包まれる。

 

◯都内、大学病院、休憩室

精神科医「そっか」

患者「はい。全ては記憶から消えるんです」

看護師「便利なもんね」

母親「・・・」

患者「戦いが終われば全て記憶から消えるって。だったらなんでもありじゃないですか?」

精神科医「そうだね。好都合だね」

看護師「今起こっていることも同じだと良いね」

患者「ですね」

精神科医「ただ、そう都合よくいくとも限らない」

看護師「現実だから」

精神科医「そう。でも現実ってなんだろう・・・」

母親「もうやめませんか」

精神科医「ああ、すみません!」

看護師「大丈夫ですか」

母親「すみません。少し頭痛が」

精神科医「ですね。今日はここまでにしましょう」

患者「お母さん大丈夫?」

母親「うん。大丈夫」

精神科医「来週、どうしますか?」

母親「ああ・・・、そうですね」

看護師「あなたにとってここは辛い場所ですか?」

母親「わからないです。ただ、私には想像力がないみたいです」

精神科医「想像力」

母親「私には、夫が死に、街が燃えた。それしか見えないんです」

看護師「私も同じですよ」

母親「・・・」

看護師「でも、無理はしないで。その時、その時で良いと思ったことをしましょう」

母親「そうですね」

精神科医「君は?」

患者「私はここ好きですね」

看護師「あら、嬉しい」

患者「ねえ。お母さん。また来たい」

母親「・・・」

精神科医「まあ、焦らずに」

母親「ありがとうございます」

 

◯都内、水族館

瑠璃と沙羅と間宮がクラゲの水槽を見ている。

沙羅と間宮、クラゲに釘付けになって楽しそうに会話している。

瑠璃「ねえ、ねえ」

沙羅「何?」

間宮「?」

瑠璃「写真撮ろうよ」

間宮・沙羅「ああ、撮るよ」

瑠璃「うわっ!シンクロした!。いや違う3人で」

沙羅「え?」

間宮「ああ、そっか。あ、俺良いわ」

瑠璃「撮るよ」

間宮「ええ・・・」

瑠璃、自撮り棒を伸ばし写真を撮る。

瑠璃の声「私の使命はこんなことじゃない。でも、今は楽しい」

物陰に黒ずくめの男。

瑠璃の声「それで良いよね。神様」